契約は申込みと承諾の合致により成立しますが、申込みに「要素の錯誤」があれば、申込みをした者は、その無効を主張することができます(民法95条本文)。
このケースで、お店は、1万円と表示すべきところを1円と誤って表示してしまい、錯誤があります。
また、売買代金をいくらとするかは、売買契約の本質に関わることですから、この錯誤は「要素」の錯誤に当たるといえます。
したがって、原則として、お店は、申込みが無効であると主張することができます。
しかし、お店に重大な落ち度がある場合でも、無効の主張を認めてしまえば、取引の安全は害されてしまいますね。
そこで、民法は、お店に「重大な過失」がある場合、錯誤無効の主張を認めておりません(同条但書)。
ただ、さらに、お店の錯誤をあなたが認識していた場合はどうでしょうか。
この場合は、取引の安全を考える必要がありませんので、お店に重大な落ち度があっても、錯誤無効の主張が許されると考えられています。
以上を整理すると、次のようになります。
① 原則として、お店は、申込みが無効であると主張することができます。
② しかし、お店に重大な落ち度があれば、その主張は認められません。お店はあなたに1円でパソコンを販売しなければなりません。
③ ただ、お店の錯誤をあなたが認識していた場合は、原則どおり、お店は、申込みが無効であると主張することができます。